料理にまつわるエピソード(その12)
(※とある女性の手記です)
うちの母親は、「料理には作り手の心が表れる」といってはばからない。
荒んだ心持ちで作った料理は、やはり荒んだものになるんだそうだ。
逆に、晴れやかに澄んだ心で作った料理は、晴れやかで美味しいものになるという。
花嫁修業中、耳にタコが出来るどころか、オクトパスと呼ばれる巨大なモンスターが出来るくらい繰り返されていたこの話、話半分、いや、話百分の一くらいでいつも聞いていたのだが、最近はあながちバカに出来る話でもないと思うようになった(ちなみに耳にタコが出来るのタコって、そのタコじゃないことくらいは知ってますので、あくまでジョーク交じりの比喩として聞いてくださいまし)。
うちでは、毎日帰りの遅い旦那のために、作った晩御飯を温めればいいだけの状態にしておくのだが(そして私は早々に寝るのだが)、ある日から突然、旦那が朝に、「昨日は何か嫌なことあったでしょう?」とか「昨日いいことあったよね?」とか、聞いてくるようになったのだ。
旦那曰く、晩御飯の内容(メニュー)と味で、だいたいの察しがつくのだという。まぁ最初は、全くもってそんな話、バカバカしいと信じていなかったのだが、それがかなりの確率で当たってくるとなれば私もちょっと考えざるを得ない。
具体的にその判別方法(?)を聞いてみても、何だかハッキリしない。旦那自身、何となくぼんやりとそんな気がする、といった程度で、自分でも明確には分かっていないらしい。
もちろん、私の旦那は超能力者などではない。
この話、誰かに話したくて仕方がないのだが、母親に話すのだけはやめておこうと思う。腹が立つほどのドヤ顔をされるのが、容易に想像出来るので。