料理にまつわるエピソード(その16)
(※とある男性の手記です)
私は、カップやきそばが大好きだ。
そして、誰が何と言おうと断固として、私が作るカップやきそばは、立派な「料理」である。
かやくとソースを取り出し、かやくを麺の上にあけ、お湯を注ぎ、3分待つ。お湯を捨て、ソースをかける。ここまでは、通常の作り方と同じである。
そこから先が、私が最も幸せを感じる時間帯。いわゆる私の世界、私ワールドである。
マネをされたくないので、詳細を明かすようなバカなマネはしないが、ともかく、ここで一手間、あいや、五手間くらいかけるのだよ、私は。
どこにでも売ってるカップやきそばが、これで極上の料理に変化するのである。
ふたに書いてある説明通りに作るのがバカらしくなるくらい、究極の料理だと私は思っている。
要するに、私はカップやきそばのプロフェッショナルなのだ。
ところで先日、そんな私にとって、相当ショッキングな出来事があった。
いつも通り、カップやきそばのふたを開け、かやくとソースを取り出し、かやくを麺の上にあける。
その後、何を思ったか、なんと私はソースまで面の上にかけてしまったのだ。
これで終わりではない。ショックなことはまだ続く。
その時点で私は間違いに気付かず、なんとそのままお湯を入れてしまうのである。
ほんとうに、もう、なんということか。
やけくそになってカップラーメンのように食ってやろうかとも思ったが、仕方なく、私はお湯を捨て、とんかつソースをかけて食った。
いつものように、究極の料理にまで昇華させる気などさらさら起きず、そのまま普通に食った。
カップやきそばのプロフェッショナルであるはずの自分が、何という失態。
数日間、そのショックから立ち直れなかったことは言うまでもない。