料理上達にはコレ!料理教室に通う前に。料理がたった7日間で簡単に上達する方法。

料理にまつわるエピソード(その17)

(※とある女性の手記です)

 

私の料理の先生は、父だった。

 

実際、父は料理が上手だった。一般的な多くの家庭と同じように、普段の食事は母が作るのであるが、休日で、かつ母が出掛けた時などは、よく父が腕を振るってくれた。実際、母の作る味噌汁より、父の作る味噌汁のほうが美味しかった。これは、私だけでなく、妹も弟も感じていた共通の意見だ。

 

もちろん、言ってしまえば家事という仕事の一環として毎日のように料理を作り続けている母と、ピンポイントでたまに作る父とで、そこにかける情熱とかこだわりとかも含めて、双方を比較するには随分と母に不利であることは承知している。それでも、父の作る味噌汁の味は、未だに忘れることが出来ない。母のそれとの比較などは一切抜きにしても、純粋に、美味しかったのだ。

 

という訳で、私の料理道は、父から味噌汁の作り方を教わるところから始まった。教わった通りにやることで、当初からそこそこ美味しく作ることが出来たという記憶があるのだが、どうやっても父の味と同じようにはならなかった。どちらかというと母の味に近かったような気がする。そしてそれは、私も母親となり、毎日のように料理をすることで随分と上達した今でも、同じだった。要するに、未だに父の味を再現出来ないでいるのだ。

 

そんな中、先日、実家にて久しぶりに弟と再会した。私と同じく、既に結婚し家庭を持った弟は、昔の華奢で気弱なイメージは日々影をひそめ、今では立派な一家の主としてそれなりに逞しくなってはいたのだが、改めて再評価せざるを得ない一件があった。

 

「晩飯の味噌汁は自分が作る」と言い出し、台所の母を押しのけてまで弟が作ったそれは、何と見事に父の味を再現していたのだった。

 

さらに私を驚かせたのは、弟が、子供の頃から何度も父が作っているところを見ていただけであって、私のように特段、父に教わった訳ではないということ。要するに自然に覚えてしまっただけだというのだ。

 

言うなれば、見よう見まね。それであの味を再現されてしまったのでは、私としては、たまったものではない。これはやはり、血筋、それも、私では受け継ぐことの出来ない、同じ男としての血筋によるものだと、自分を納得させるしかなかった。

 

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