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料理にまつわるエピソード(その19)

(※とある女性の手記です)

 

最近、うちの母親がたいそう御冠(おかんむり)なのです。

 

曰く、ここのところ世間を騒がせているあらゆる物騒なニュースが、気に入らないんだそうです。とはいえ、何も出来ない自分に、苛立ちを感じているそうです。まぁ私からしたら、そういう気持ちを持つだけでも、立派だとは思うんですが。

 

母は、いったん話し出したら止まらないタイプの人間です。そしてそうなると、もはや誰にも止められないのです。その日も、私とのちょっとした会話の流れの中で、近頃世間がめっきり物騒になったという話になってしまい、ここのところ報道されたいくつかの事件や事故について、評論家よろしく、深く掘り下げて語り始めてしまいました。

 

私は聞き流すでもなく、かといって集中して耳を傾けるでもなく、目線は母のほうに向けながらも、また始まったな〜などと考えて黙っていたのですが、さすがに始まって30分を過ぎた頃から、そしていつも通り、同じ話が何度かループしていることに気付いた頃から、早く終わることを切実に祈っていました(笑)。

 

時間的にもお昼時で、いい加減そろそろお腹が空いてきたということもありました(笑)。そこで、話を聞きながら(聞いているフリをしながら)も、私は構わず料理の支度に取り掛かったのです。

 

さらに30分近く経ったでしょうか。野菜炒めなど諸々を取り揃え、見た目だけはそれっぽく出来上がった昼御飯を前にしても、まだ母の話は続いていました。

 

「とりあえず、食べよっか」

 

そう言いながら、私はようやく空腹を満たせるという嬉しい気持ちと、食べている間もずっと話を聞かされるんだろうなという諦めと覚悟が、複雑に入り混じったような不思議な心境でした。

 

ところが。

 

野菜炒めを一口、口に含んだ母が、こうつぶやいて、突然話をやめたのです。

 

「なにこれおいしい」

 

それから母は、話の続きは一切せず、それどころかほとんどしゃべらず、ただ黙々と、料理を食べ続けたのです。それでも、顔だけは、にこにこと笑っていました。

 

おいしい料理には、話し出したら誰にも止められない強固な母ですら、黙らせる力があるんですね。

 

そんなことを、改めて実感した一幕でした。

 

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