料理にまつわるエピソード(その20)
(※とある女性の手記です)
「お前と一緒になったのは、料理がうまいから。」
これを、ことあるごとに繰り返し強調されると、いい加減だんだん腹が立ってくる訳で。
もはや「他に長所がない」「他はダメだけど料理だけはうまいから仕方なく妥協した」「料理以外はお前は全くダメなやつだ」というようにしか聞こえなくなってくる訳で。もはやそれを何度も言うことで、繰り返し自分自身に言い聞かせて、何とか納得しているようにしか思えない訳で。
すみません。失礼しました。うちの旦那の話です。
確かに、付き合っている時(結婚前)には、よく自宅に招いて、手料理を振る舞ったものです。当時から料理の腕前には自信のあった私が、そうすることで彼の心を掴みたいという下心が少しも無かったかというと、それは正直に否定せざるを得ません。
結婚してしばらくは、それほど深く考えることもなく、冒頭のセリフを言われることが、自分の誇りでもあり、喜びでもありました。ですが、5年が経過した今、同じことを言われても、しかもこの期において未だたびたび繰り返されては、何か別の意図があるのではないかと勘繰らざるを得ないのです。
そこでついに、正直にぶつけました。彼に。
もうそれはいいからと。聞き飽きたからと。もはやそればっかりで、他に長所がないようにしか聞こえないと。
それを受けた彼の反応は、いたって普通というか、ある程度予想がついていたものでした。
「バカだなぁ。確かに料理がうまいっていうのは理由としては大きかったけど、まさかそれだけで結婚なんてする訳ないでしょ。」
はぁ・・・。まぁそれは良かったですが、では、これからはちゃんと別のところも褒めてもらえますかね?
「ちょっと俺も言い方に気を付けてみるよ」
そういった彼が、後日ちょっと言い方を変えてきたのです。
「お前と一緒になったのは、料理もうまいから。」
で?他に何がうまいって?知りたいのはそこでしょ。
「・・・掃除とか洗濯とか・・・。」
あのさ、それって、結婚前は知らなかったことでしょ。何なんだ、いったい・・・。
そして私は今、本気でヘコんでいるのです。